福岡高等裁判所 昭和42年(ネ)506号 判決 1968年2月28日
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人らの負担とする。
事実
控訴人ら訴訟復代理人は、「原判決を取り消す。訴外亡園田熊雄が昭和三五年九月三〇日なした遺言は無効であることを確認する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人内藤ノブ子は、適式の呼出しを受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。その余の被控訴人ら訴訟復代理人は、主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張および証拠関係は、原判決の事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
理由
本件訴が、訴外亡園田熊雄のなした「遺言」そのものの無効確認を求めるものであることは、控訴人らの主張自体に徴して明白であるところ、当裁判所も、遺言自体の無効確認の訴は本来許さるべきものではない、と解する。けだし、遺言は、一種の法律行為であつて、その有効、無効に関しては、もとより法律的判断を包含していないわけではないが、しかし、法律関係そのものではなくて、法律効果発生の要件たる前提事実に過ぎず、これをもつて現在かつ特定の法律関係とは認めがたいからである。このことは、売買契約等契約自体の無効確認訴訟の許されないことと択ぶところはない。従つて、遺言に基づく法律効果としての特定の権利、義務の存否を求めるものであれば格別、本件確認の訴は、その主張するところ自体において不適法として却下を免れない。原判決は、結局、正当であつて本件控訴は理由がない。
よつて、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条、第九三条に従い、主文のとおり判決する。